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  1. 被害からの脱出・支援方法

ハラスメント被害者を救う「社会的承認」

DVやモラハラ、パワハラの被害に遭った人の話を聞いていて「そんなに嫌なら逃げればよかったじゃん」「なんで抵抗しないの?」といった疑問を持たれる方、いると思います。加害者の卑劣な行動は許せないけど、被害者の行動も普通じゃないので、素朴な疑問でそうなってしまうのでしょう。
(これ、二次被害です。最悪被害者が死ぬので、絶対言わないでくださいね)

しかし、加害者の狡猾さについて述べましたが、加害者は巧妙に被害者を追い込んで、孤立させてきます。

この孤立がミソで、被害者が被害を認識できなくなるのは、この辺りにあるのです。

社会的承認とは

「社会的承認」とは、一定の社会通念にのっとり、他者から自分が認められることを指します。この場合だと、社会通念からみて自分がされている行動が「おかしい」と認めてもらえることですね。
犯罪被害などの場合も、訴えを聞いて信じてもらえることは、社会的承認だといえるでしょう。

マズローの5段階欲求では生存、安全、所属の次に承認欲求が来るとされ、最後の自己実現に至るまでにはとても重要です。DVなどのハラスメント被害者の場合、安全が脅かされていることがほとんどで、最初の生存ないし安全欲求の段階にあることも多いです。
しかし、この5段階欲求はくっきり分かれているものでもないのです。また、より上位の欲求が満たされると、自尊心の回復に役立ちます。

ハラスメントや犯罪の被害者は、極端に自尊感情が傷ついていますので、ここを何とかしてあげるだけで、加害者から逃げる、抵抗するといった選択肢にたどり着けると考えております(私の経験上ですが。。。)。

「それ、おかしいよ」の重要性

加害者は、被害者を加害者に仕立てることで、自分の加害を隠して社会的な承認も得ようとしてきます。つまり、被害者は孤立するだけでなく、被害に遭っていることを信じてもらえなくなるのです。

ですから、自分では「この状況おかしい」と思っていても、確信が持てなくなり、だんだん抵抗することができなくなっていきます。よく、DVの被害者は最初は混乱している状況だと言われ、「おかしい」と「自分が悪いのかな?」が混在しています。しかし、被害が続くものの誰にも相談できなくなってくると、だんだん「おかしい」が消え、抵抗できなくなっていくのです。
で、抵抗できなくなってくると「自分が悪いから被害に遭うんだ」「自分さえ我慢すれば」といった自己弁護が出てきて、なんとか心を守ろうとします。
(この過程、うつ病の抵抗期→疲憊(ひはい)期からの落ち込みにそっくりですね。だからこそ、被害者の多くがうつ状態になるのではないかと見ております)

このとき、だれか1人でも「それ、おかしいよ」と言ってくれると、「おかしい」が承認されて強化されていくので、自尊感情や抵抗する気力を取り戻すことが可能になります。

だからこそ、周りの人には「なんで逃げなかったの?」ではなく、「それ、おかしいよ。専門機関に相談しないといけないよ」と言ってほしい。自分が背負いきれない案件だからと、被害を受けた話を嫌う方もいますが、一般的にみてどうか、だけ示してあげるだけでも、十分な支援です。
ただし、逃げる前に示してあげてください。逃げてから示されても単なる二次被害です。

私自身は被害に遭ってても、そこ以外に心の拠り所がなかったため、加害者から離れられなかった、という事情もありました。被害から逃げた後で、脅迫されてまで一緒にいる関係ではなかったと知りましたが、こういう被害もあります。

名前を付けることの大事さ

性被害に遭った方の記事などで、「あとで自分が何をされたか知って、自分が被害者だったとわかった」と書かれていることがあります。DVやモラハラ等のハラスメントも一緒で、被害者は自分が被害に遭っていると思っていないことがあるのです。とくに、人間関係が希薄になって孤立してくると、「おかしい」と言われても助けきれないこともあります。
(正常化バイアスなど、自分が危機的だと思わないようにする心理の働きもあると思われます)

ですから、もし「それおかしいよ」と言ってみても被害者の態度が変わらなかったり、加害者をかばおうとするそぶりを見せた場合は「それDVだよ(モラハラだよ)」というように、名前をつけることが効果的です。

人間は、名前がないものを思考としてとらえられませんが、名前がつく=概念がつきますので、自分が受けている被害と照合することが可能になり、正気に返るのです。災害や山岳遭難では、正常化バイアスと呼ばれ、明らかに自分が危機的な状況であっても、普段通りだと思い込もうとする心理の働きが、避難や適切な行動を邪魔することがあります。災害に等しい被害の現場では、これが十分に働いていることも考えられますので、その点でも効果的です。

というのも、正常化バイアスを解くには、2つ以上の物的証拠が必要になるからです。

非常ベルが鳴っていても「誤報だろう」と思い込んでいる人間も、煙が漂ってきたり、上から大慌てで逃げてくる人を見たりすると、自分が危機的な状況だと認識できて、正常化バイアスが解けるのです。

被害の現場では、名前をつけることが、正常化バイアスを解除するカギになる、ということですね。

ですから、もし「それおかしいよ」と言ってみても被害者が動かない場合は、「それDVだよ」と言ってみると、動く可能性があります。支援の現場にいらっしゃる方は、効果が認められますのでぜひ覚えておいてください。

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